ついったータグの
#リプくだすった方のお子さんを拉致してうちの子と絡めて小さなお話にして叩きつける の小話です
澪さん宅のジゼルちゃんとうちの芽い香との話です
日本の首都、東京にある国会議事堂。荘厳な雰囲気を醸し出していたこの建物は、今や悲痛な空気が漂っている。
「はぁ、なんで僕がこんなこと…」
かたく軋んだ髪の間から、鈍く光る左眼だけを覗かせて、少女ーというにはいろいろと似つかわしくないがーはひとりごちた。長躯を折り曲げて、重い足取りで一般人居住区の一角を歩いている。
「ムラクモだからって、なんでこんな…」
彼女が所属する13班は、ムラクモのドラゴン討伐隊というよりも、もはや"何でも屋"である。今も、居住区で困っている人がいないか巡回してくれ、と言われ、13班の3人で分担して回っているのだ。
「人に話聞くなんて、できるわけないってのに」
と、できる限り人気の少ない場所を歩き回っているのだった。
突然、腰回り、服の上から誰かに掴まれる感覚がした。こういうことに人一倍敏感な彼女は、全身に怖気を感じ、慌てて体ごと勢いよく振り返った。
すると、そこには彼女が想像していた、禿げて肥えた中年親父や不気味な笑顔を浮かべたガラの悪い男などではなく、まさに、"少女"といった感じの小さな女の子が立っていた。服を引き剥がされ行き場を失った手を宙に浮かべたまま、あどけない瞳を彼女に向けている。
彼女は一瞬ギクリとした。金色のツインテールに、紫と黒のゴシックなロリータ服。同じチームの口悪い男を髣髴とさせたが、背丈も愛らしさも全く違った。
「…なに………」
上衣の触れられた部分を手で撫でつけながら、彼女は独り言のように尋ねた。
「あ、あの私、人を、探してて……はぐれて…」
潤んだ瞳をこちらに向けて、少女は遠慮がちに答えた。
「それって、なに…迷子？」
そう尋ねた直後、少女は我慢していた堰を切ったように、はらはらと涙を零し始めた。
「あっ……」
彼女はしまった、と思った。自分の発した言葉を後悔し、できることなら今すぐ逃げ出したかった。しかし泣いている少女を残し立ち去るのは良心が傷むし、慰めのために少女に触れることも躊躇われた。
ごめん、と小さく呟いたが、少女は顔を袖で覆って首を横に振るだけだった。どうすればいいんだ、といたたまれない、気まずい気持ちを抱えたまま、その場につっ立っていることしか出来なかった。
「あの、…議事堂内には、いると思う…ですけど……」
小刻みにすすり上げながら、少女はようやく口を開いた。顔を上げるとまだ、涙の跡が頬に残っている。
「え、あ……そう…」
いきなり泣き出すからてっきり…とは流石に口には出さず、心の中に留めおいた。
「でも…何処にいるのか、分からなくて…」
俯き、消え入りそうな声で少女は言った。見るからに絶望している。
「中に居るんなら…今探さなくてもいいんじゃないの？自分たちの部屋にでも居ればそのうち帰ってくるでしょ…」
「！！………」
少女は思いもしなかった、という顔で彼女を見上げた。瞳に生気が宿り、表情を明るくした。
「あ、ありがとうございます……！」
安堵と喜びを顔に含み、少女は小さく頭を下げた。
「う、ん……その…良かったらついてったげる、けど……居住区…」
彼女は柄にも無いことをしてるな、と思って、赤くなった頬を隠すようにふいとそっぽを向いた。
「あ…私、ムラクモの居住区、です……」
少女もまたつられて恥じらうように、少しだけ微笑みながら答えた。
「そ……一緒、なんだ」
「！…ムラクモ、お姉さんも……」
彼女がエレベーターに向かって歩き出すと、少女も小走りでぴたりと横に並び、そっと彼女の左手を握った。彼女は内心戸惑いと恐怖を感じたが、今度は振り払うことはしなかった。
少女の歩調に合わせてゆっくりと歩きながら、彼女は随分と長い間感じていなかった人の温もりを味わっていた。
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